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教諭

昭和62年4月1日 明誉實應

人は法をよりどころとし、法はそれを信ずる人を得て弘まり、人を生かし、家庭を生かし、社会を生かしてこそ、その真価を発揮するものなり。
まことに、大悲願王阿弥陀如来の摂取不捨の本願は、わが宗祖大師法然上人によって顕され、その選択本願念仏の教行は、あまねく人を生かし、その心を潤したり。
宗祖大師御入滅後に前後して、称名念仏の声、各地に響きわたらんとするとき、外には既成教団による弾圧、内には背師自立の異義横行乱立して、如来の大悲、大師の真義まさに隠没せんとし、正業の勤めも危うく廃絶されんとする危機に遭遇せり。
しかるに、大師の上足大紹正宗国師聖光房弁阿弁長上人は、鎮西にあって宗要の真義を末代念仏引授手印の上に伝え、その法資記主禅師然阿良忠上人、覇府鎌倉の地に赴きて、親承の口伝を報夢鈔五十余帖の上に開示せらる。
また勢観房源智上人は京洛の地にとどまり、師恩に報いるに弥陀立像を造立し、一枚起請文を奉持して、祖廟の復興に尽瘁せられたり。
おもうに、大師に対する三上人報恩の至誠は、選択本願念仏の真義発揚、称名念仏の弘通、門弟の育成の上に結実し、大師の元意、如来の大悲をして末代に光彩を放たしめ、もって浄土宗の今日在るの基礎を盤石に固めたもう。
いま三上人遠忌祥当の年を迎えるにあたり、浄土一宗の僧俗こぞって、その慈恩に報恩謝徳の念を新たにするとともに、正法伝持・弘通の範を三上人に求めて、一層称名念仏の一行に徹し、大師の鴻教に報いらんことを懇望す。
ここに浄土念仏を信ずる者は、主義・思想の百花斉放する現状に鑑みてこれを熟視し、三上人の輝かしき法灯をふまえて、浄土宗義の時代即応に過なきを期すべきなり。

昭和62年4月1日
浄土門主 明誉實應