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教諭

昭和52年9月16日 量誉信宏

現代の世相を考えてみますに、戦後、物質文明は急激に発達をとげてまいりましたが、精神文化がそれに伴っておりません。精神文化の根本基調は宗教心の高揚にあることはいうまでもないのであります。そうした精神的支柱が欠けているところに、道義の頽廃、非行の頻発など、憂慮すべき現代の危機を象徴する諸問題が誘発されてくるのであります。
浄土宗を開創された法然上人は、念仏の信仰を基盤とするところに真実の人生が開けてくることを強調されたのであります。それは唐の善導大師が大聖釈尊出世の御本懐を体して宣揚された念仏のみ教えを上人が絶対に信頼されたからであります。
高祖は、真実の念仏の中には必ず懺悔と感謝の意識がなければならぬと主張して、自らは念念称名常懺悔の生活に徹底され、そうした宗教情操を涵養せんがため、絵画、彫刻、讃歌、写経などを通じて、民衆の生活を指導されたのであります。
昭和五十五年、高祖善導大師千三百年の遠忌を迎えるにあたり、これを勝縁として、念仏信仰に生きる者は、協力一致して同信の輪を拡げ、混迷せる社会の浄化に精進することが、われら浄土教徒の時代的責務でなければなりません。
今や世をあげて、永遠の平和を熱願するものでありますが、真の平和は、念仏信仰を根本とし、人種や国境を超えてすべての人々が互いに拝み合いの生活を実現することによってこそ、初めて達成されるものであります。
希わくは、浄土門の同信各位は、宗祖法然上人高祖善導大師の垂範にのっとり口称念仏の一行を策励し、もって祖恩に報ぜられんことを。

昭和52年9月16日
浄土門主 量誉信宏