戒は仏教徒としてあるべき生活規範であり、日常生活の「しつけ」のごときものである。浄土宗義においては、戒は念仏に対して助業(異類助業)とされるが、これは念仏教徒をして「はぐくみ」助け、正しい行為をなすべく導くものである。したがって、平常、戒の精神を持っているならば、戒徳が次第に身心に薫習して、自然に戒法にかなった行為をすることになる。この時になって助業とされた戒法は念仏と一体となって、念戒一致といわれるのである。
しかし、その初めに三聚浄戒の精神によって、身心を規正する段階における戒を助業という。念仏教徒は念仏するくことによって、仏と三縁(親縁・近縁・増上縁)の関係ができて、仏は念仏するものを知りたまい、見たまい、目前に現れたまう。それで、仏の御前にては悪いことは出来ぬと自省するところに自然に止悪修善の行いをすることとなり、戒法にかなった生活をすることになる。ここに念戒一致という浄土宗徒の日常生活がある。かかるところより、五重相伝と授戒とはともに盛んに修するようにつとめるべきである。
(昭和60年度 浄土宗布教必携より)