これを要するに、『説法式典』が説いているように、一寺の住職はすべて布教師であって、学、不学を問わず、能力に応じて、あらゆる機会をとらえて法を説くことを本業とすべきものである。布教教化の盛衰は一宗の興廃に関する重要なものである。
現今、テレビ・ラジオの普及によって、学者名士の講演・談話を家庭にありながら自由に聞くことができる。また、大学教育の一般化にともなって、知識階層が増加している。したがって、布教師はつねに社会諸科学の勉学にはげむとともに、仏教学・浄土学の研鑽に精進して、法然上人の念仏教化の精神を学び、これを指針として、混迷せる現代社会の人々の精神指導にあたるべきものである。これには強いフロンティア精神が必要であることは、いうまでもない。特に本年は「こころに花を」咲かすべき一大キャンペーンの年であることを心にとめて、一層の努力と精進を願いたいと思う。
(昭和58年度 浄土宗布教必携より)