3 戒と念仏の関係

 戒は生活規範であり、仏教徒として当然守るべき日常生活の「しつけ」のごときものである。戒は念仏に対して雑行、助業とされるが、これは念仏する人間を「はぐくみ」助けて正しい行為に導くものである。したがって平常、戒の精神を持っているならば、戒徳が次第に身につき、自然に戒法にかなった行為をするようになる。社会生活における「しつけ」と同様である。

 しかし、その初めにあっては規律によって自律他律の別はあっても規正すべきものである。この段階における戒を助業という。念仏教徒は念仏することによって仏と三縁(親縁・近縁・増上縁)の関係ができ、仏は常に目前にあって私たちの行為を見たもう。したがって、人間の目はごまかすことはできても、仏の目をごまかすことができぬとわかれば、自然に止悪修善の行為をすることになり、戒にかなった生活をすることになる。ここに念戒一致の浄土宗徒の日常生活がある。かかる点より、五重相伝、授戒ともに受けるべきことを広くすすめるようにしたいものである。

(昭和57年度 浄土宗布教必携より)