第1章◎ 一紙小消息
  『一紙小消息』の心─凡夫往生の喜び

 
 
知恩院浄土宗学研究所嘱託研究員 安達 俊英

1.はじめに

『一紙小消息』は『一枚起請文』に次いでよく拝読される法然上人のご法語といえますが、『一枚起請文』や善導大師の「発願文」に比べると、拝読される機会はそれほど多くはないかもしれません。その理由としては『一枚起請文』などに比べて長いから、また内容的に教義的な色彩が強いからといったことが考えられます。
 しかしながら、法然上人の教えをより具体的に、しかもそれを端的に示しているという点で、この『一紙小消息』は『一枚起請文』にはない特色を持っているといえます。本稿がきっかけとなり、『一枚起請文』や「発願文」などと並んで、『一紙小消息』がより一層拝読され、檀信徒の皆さまにも親しまれるようになることを期待いたします。