はじめに
二〇〇一年元旦に浄土宗は、四項目からなる「浄土宗二十一世紀劈頭宣言」を発した。その終わりの項目は「世界に共(とも)生(いき)を」(共に生きる平和な世界を築こう)である。誠に「大遠忌に向けて」ふさわしい宣言である。浄土宗では続いて「浄土宗二十一世紀劈頭宣言」の想いを一言で込めたメッセージ・シンボル「法然共生(ほうねんともいき)」を作成し、大遠忌記念事業の推進・展開を通して「法然上人像の活力創造」「寺院の活力創造」「壇信徒の活力創造」といった「三つの活力創造」を目指した活動を全国的に展開した。「劈頭宣言」の精神については、「法然上人をたたえる会」会員の各界著名人が語る映像集『ともいきがたり』も作られている(第一集は平成二十年二月に、第二集は平成二十一年三月に全カ寺に配布済。第三集は本年六月に配布予定)。
このように、浄土宗として共生の活動を始めた今日、まず「共生」がどのような意味を持っているのかを、述べてみたい。本稿に今年度から「共生」についての特別コーナーが新たに加わったが、すでに私は二〇〇四年三月に浄土宗教学院発行の『仏教論叢』四八号に「浄土宗と共生の思想」と題して、平成十五年度の浄土宗総合学術大会の特別講演を掲載した。その後、乞われるままに生存科学研究所発行の雑誌『生存科学』一四巻二号(『Seizon and Life Science Vol.14 B, 2004 3』)に「生存科学と宗教学」 の論文を掲載し、いかに現代日本に必要かということを述べ、さらに世界に「共生」の概念が必要かをアメリカの佛教大学ロサンゼルス校発行の英文学術誌『Light of Wisdom』に同様の趣旨のことを述べた。
ここでは宗祖法然上人八百年大遠忌と共生思想についての基礎の考えを該略して述べてみようと思う。