はしがき
すでに諸大徳各位ご高承のとおり、平成十三年度より、従来の『布教・教化指針』冊子編集方針を変更し、教学教化の方針を本宗教師に周知徹底するガイドブック的なものを発行することに相成った。『布教羅針盤』として、中村康隆ご門主猊下の「教諭」に基づき、昨年まで、五年間にわたり五重相伝の勧誡編、初重「機」、二重「行」、三重「解」、四重「証」、第五重「信」 を順次出版発行することができた。五重相伝第五重「信」を解明することによって、いちおう五重相伝の勧誡編を仕上げた。いまさら申しあげるまでもなく、わが浄土宗の教化の基本が「五重相伝」にあることは間違いない。
昨年の『布教羅針盤』序文において、『方丈記』をとりあげて申しあげたように、八百年あとの現代と、平安末、鎌倉初期との社会相は大異なしとさえいってよい。法然上人もしご在世ならば、どのようにご教示くださるか、を念頭におきながら、教化に励まねばならぬ、と愚昧愚行を懺悔しながら自ら厳しく叱咤していることを重ねて申しあげ、「五重相伝」のための『羅針盤』はとりあえず擱くことになった。
今年からは、伊藤唯眞先生が布教委員会の委員長に就任してくださった。五年間にわたりご尽力賜わった真野龍海先生はじめ、羽田惠三(昨年ご遷化)・林田康順両先生などの執筆者各位に対して、あらためて心から感謝の誠を捧げたい。
さて、いよいよ五年後に法然上人八百年大遠忌を迎えるにあたり、伊藤委員長はじめ各委員諸先生合意のもと、今年度からの『布教羅針盤』は『勅修御伝』をとりあげ、「尋源」と「培根」の大きな糧にすることに相成った。まことに喜ばしいことである。
各年度の小テーマとして、今年度は「怨親を超えて」、平成十九年度は「別離、そして出会い」、平成二十年度は「ただひとつの道」、平成二十一年度は「死生を超えて」、平成二十二年度は「灯しびを継ぐ」のもとに法然上人ご一代の真髄を披瀝して頂くことになった。有り難いきわみである。
関係各位の諸先生のお力添えに御礼を申しあげて、粗辞ながら、序にかえる。
平成十八年十月
布教委員会