四誓偈はいうまでもなく『無量寿経』上巻に出る偈文である。無量寿経上巻は、阿弥陀仏の本願である四十八の誓願を中心に説き出だされる。
無量寿経は王舎城の耆闍崛山の中において、一万二千人の大比丘衆、大乗の菩薩方を対象に説かれた。菩薩方の功徳の壮大な文章で讃えられ、かような福徳円満の菩薩が、耆闍崛山上に来会し、時と、処と、大衆が備わり、本経開説の条件が整えられる。
その時世尊のみ気色まことにうるわしく、みすがたきわめて清浄に、お顔は喜びの色にかがやいて、いともおごそかにましました。阿難尊者が、今日世尊は何故にこのように、み気色うるわしくましますのかとお尋ねし、世尊また、弥陀如来の衆生をすくわんとおぼしめすみこころを説き明かそうとすることは、出世の本懐、真実の利であるとされ、阿弥陀仏のことを説き出されるのである。
即ち正宗文といわれる本論に入られるのである。それによると、
久遠無量 不可思議 無央数劫という、はてしなき久遠の昔、錠光如来が此の世に出られ、無量の衆生を教化し、道を得しめて涅槃に入られ、次々と五十二の如来が、この世に出られて、衆生済度ののち滅度に入られた。そして五十三番目に世自在王仏が出世された。
その時、一人の国王があり、仏法を聞いて大変感動し、大菩提心を起こし、国家、王位をすてて沙門となり、法蔵と号した。才智世にすぐれた方であったが、世自在王仏のもとにいたり、仏を讃歎して、無上殊勝の誓願を建てられるのである。
法蔵菩薩は世自在王仏に、
「私は、無上の大菩提心を発しました。どうぞ世尊よ、私のために、諸仏浄土の修行と、そのありさまをお教えて下さい」
と願い出られたのである。世自在王仏は、その願いに応じて二百一拾億の諸仏国土の優劣と、そこに住む人天の善悪を説き、法蔵菩薩にその相を、眼のあたりに示現されたのである。
その時法蔵菩薩は、無上殊勝の大願をおこし、五劫という長い時間、思惟に思惟を重ねて、仏土建立の因となる清浄の修行を選ばれたのである。世自在王仏は「今こそ、その願を宣べよ」と申され、法蔵菩薩は、四十八の願をのべられたのである。
四十八の願を説き終わった法蔵菩薩は、頌を説いて、この四十八願の本意をあきらかにし、浄土往生の正因をのべ、またさらに天地の奇瑞によって、発願の誠を証明ありたき旨を請われるのである。この時の頌文が、四誓の偈である。
(平成8年度 浄土宗布教・教化指針より)