日本での脳死の定義は一九八五年に発表された厚生省「脳死に関する研究班」(代表・竹内一夫、一般に竹内規準と呼ぶ)の「脳死とは脳幹を含む全脳髄の不可逆的な機能喪失の状態である」に代表される。
一九九二年に提出された「臨時脳死及び臓器移植調査会」(以下、「脳死臨調」)の答申も竹内基準によっている。つまり「脳死については一般に「脳幹を含む全脳の不可逆的機能停止」と定義されており、国際的にもこれが広く認められている。このような定義に対し、身体を統合する脳の機能の中でも、特に生体に必須とされる機能、例えば心拍・呼吸などを統合・調節する機能は、脳の中でも主として脳幹部にあることから「脳死」をむしろ「脳幹の不可逆的機能停止」と定義すべきであるとの考え方も近年有力となってきている。しかし、脳全体の機能が不可逆的に停止するという点では両者間に実質的な相違は認められないことから、あえて今、これを「脳幹死」で定義する必要はないものと思われる。(後略)」と言う。日本では全脳死を脳死の概念としているのである。これは諸外国の場合でもイギリスが脳幹死をとっている以外はほとんどは全脳死である。
(平成5年度 浄土宗布教・教化指針より)