<脳死とは何か>

 これまでは心臓死が死であった。呼吸の停止、瞳孔の散大、心臓の拍動停止の三徴候が判定規準であった。しかし今、脳死という新しい死の概念が提示されたのである。

 脳は主として大脳、脳幹(間脳、中脳、橋、延髄)、小脳が機能を分担している。大脳は外からの情報を認識、記憶し、判断したり、情緒(前頭葉)などの神経活動を司る部分である。脳幹は生命維持の中枢であって、とくに呼吸、血圧、脈拍などを保っている部分で、肉体としての身体を調節する役割を勤めている。つまり大脳は人間の精神活動を、脳幹は人間の体の調節という主要な部分を担っているのである。従って脳死というタームは、脳全体の死を指す場合と、脳の部分の死を言う場合とに分けられるのである。具体的には全脳死、脳幹死、植物状態がある。全脳死は脳全体の死を言い、脳幹死は大脳は生きているが脳幹が死んでいる状態を言う。植物状態は、大脳は死んでいるが脳幹は生きている状態を指しており、意識はないが、自分で呼吸ができ、血圧なども調節できるのである。脳死と言った場合は、全脳死か脳幹死を指しているのである。

(平成5年度 浄土宗布教・教化指針より)