浄土宗信徒に念仏信仰の真髄を知らしめて、仏とともに在る喜びの念仏生活を説
くものが五重相伝(化他五重)である。念仏するものは、現世において親縁・近縁・
増上縁というありがたい因縁によって仏と結ばれ、仏は智慧の光明をもって、念仏
者の心の奥底まで照らし、知りたもうばかりでなく、大悲の本願によって救いたも
う。現世においては仏と離れず守護を得て、安堵した楽しい生涯(死生ともにわづ
らいない)を全うすることができる。そして人間としての生涯が終わったならば祖
先のまします安楽な浄土に生まれることができるのである。人間の肉体と生命とは
別個のものであって、肉体は有限であるが、生命は永遠に存続するものである。こ
の永遠なる生命による浄土を信じて、仏とともにある念仏生活、−法然上人のお
言葉によれば「死生ともにわづらいなき」生き方を説きあかすべきである。
(平成5年度 浄土宗布教・教化指針より)