私たちは社会人であるとともに、仏教徒であり、かつ浄土宗の念仏教徒である。
社会人であるかぎり、社会道徳、社会慣習、法律は守らなければならない。それと
同様に、仏教徒として、「仏教徒らしき生活規範」「考え方」がある。これ授戒であ
る。授戒は大乗戒の精神を伝えることであって、摂律儀戒・摂善法戒・摂衆生戒に
分かれているが、要するところは仏教徒として守るべき生活規範であって、自己自
身の我欲の意(利己主義)を自律自制して止悪修善につとめる心構えである。この
三聚浄戒の精神を体して生活するところに仏教徒としての生き方がある。
現今、社会の生活規範が乱れて、「我欲我執」の生活に追われ、個人主義が利己主
義と解され「我欲」の充足が権利のごとく考えられている。さらに自由主義が放任
主義とされ、金銭の奴隷となって、本来、個人が義務と責任を負って自律自制すべ
き民主主義の精神が失われんとしている。かかる我欲の意を抑止するものが十重禁
戒である。したがって、授戒を盛んにして、仏教徒として在るべき日々の生活を説
きあかすべきである。
(平成5年度 浄土宗布教・教化指針より)