布教・教化指針

 布教・教化指針序文

 本『布教・教化指針』は教諭の精神に則り、本宗の全寺院住職はいうまでもなく、直接布教・教化に従事される教師に、教化宗団としての本宗の布教・教化の基本方針を示すものである。

 平成五年を迎えて、来るべき二十一世紀を展望して、本宗が本来教化宗団たるの意義を再認識して、宗祖法然上人ならびに歴世の祖師たち不惜身命の精神を持って、念仏信仰の布教により、社会民心の教化に盡力されて、豊かな精神生活を説きあかされた後を学び、ひろく民衆を善導して以て、社会の安寧と人々の幸福に寄与せんとするものである。

 然るに現代世相を鑑え見るに、先年布教目標として掲げた『おかげさまで』=生かされている『いのち』を更により深く徹底する必要のあることを痛感するために、本年度も重ねてこれを掲げるものである。よって布教・教化に従事する教師は、この意趣を十分に認識して、より強力に布教・教化に邁進されんことを切望するものである。

 布教・教化の盛衰は、一寺院の興廃に関する問題であるばかりでなく、浄土宗教団の盛衰に関する問題でもあり、さらに引いては社会の安寧に関する問題でもある。布教・教化活動のなき寺院、教団は宗教教団として、社会的に存立の意義なき無価値の存在である。したがって、寺院住職は所在する寺院が布教・教化の道場たるの意義を十分に認知して、列祖方の布教・教化活動を範として、以て民心の善導に盡力されんことを切に希望するものである。

 なお、ここで用いる布教・教化の言葉は、教えを説いてひろく世の人々に知らしめることを布教といい、説いた教えによって人々を善導することを教化という。即ち教えを説くを布教、人々の善導を教化とす。

(平成5年度 浄土宗布教・教化指針より)