浄土宗寺院はほとんどが菩提寺、香華院であって、位牌堂、納骨堂、または墓地等を管理保護している。そこに奉祀されているものは檀信徒各家の祖霊であり、祖先が永久に鎮まる処と考えられている。そしてさらに将来は自己自身も死後奉祀される所としている。したがって檀信徒にとりて寺院の諸堂は「聖なる場所」であり、自身の最後を托するところと考えられている。そのために檀信徒は祖先の霊を大切に奉祀護持されることを願っている。
したがって、祖霊を奉祀する処は常に清掃につとめて聖域ならしめ、いやしくもこの聖域を汚すおそれのあるときは、断固として排除すべきである。
祖先の霊と子孫(檀家)とは血のつながりのあるものであるから、寺院と檀家とは実に深い関係にある。祖霊は誦経念仏によって既に極楽浄土にましますことを説き、祖先の「おかげで」今日のあることを十分知らしめて、感謝報恩、と祖霊の仏道増進の念仏を行ずべきことをあかし、併せて信者自身も念仏によって現世の護念を頂き、この人生が終ったならば祖先のまします浄土へ行くことを説きあかすべきである。但に祖霊追善の念仏ばかりでなく、自身の往生業たる念仏が本宗の本旨であることを説いて、念仏信仰の涵養につとめるべきものである。
(平成2年度 浄土宗布教・教化指針より)