3 住職は全て布教師たること

 牛秀の『説法式要』に

 「オヨソ一寺ニ住持スルモノハ、学不学ヲ論ゼズ、説法スルガ本務トスベシ」とあり、浄土宗寺院は上記のごとく全て布教道場であり、教化会場であるから、法然上人の念仏の教えを、但に檀信徒ばかりでなくフロンティア(開拓)精神をもって地域社会の人々に説くべき責務があると心得るべきである。

 法然上人は念仏によりて豊かな精神生活があることを「さとら」れて、浄土宗を開宗された。したがってその教えを伝える浄土宗侶、寺院住職が布教教化に専念することは、とりもなおさず法然上人の御意に答えることであり、阿弥陀仏の本願大悲に随うことであるから、その人こそ真の仏弟子ということが出来る。

 ことに近時、大学教育の一般化とテレビ、ラジオの普及によって、一般人は自然科学と人文科学等に関する知識を得る機会が多いために、布教師たるものは、ただ仏教学、浄土教のみならず社会一般の諸科学の知識を十分に学んで、内容豊かな布教につとめるべきである。

 また、平常業務に追われて、直接教えを聞く機会にめぐまれぬ人には文書(小冊子、パンフレット等)による伝道も重要である。ことに檀信徒に「寺報」「会報」等を配布することは寺院に大きな関心をもたすことになり、檀信徒教化に大きな力のあることを知るべきである。

(平成2年度 浄土宗布教・教化指針より)